INTRO なぜ「脇が開く」と力が入らないのか?
ベンチプレスで脇を開きすぎたり、荷物を体から離して持つと、同じ重さでも劇的に重く感じる。
これは「筋力(Force)」が弱くなったのではなく、「トルク(Torque)」の条件が悪化したからだ。
関節を回す力の正体であるトルクと、それを操る「モーメントアーム」を理解すれば、怪我なく最大のパワーを発揮できる。
The Lever (テコの腕)
・Torque (トルク): 「回転させる能力」。力の大きさだけでなく、「どこを押すか」で決まる。
・Moment Arm (モーメントアーム): 回転軸(関節)から、力の作用線までの「最短距離」。
この「アームの長さ」が勝負を決める。相手のアームを長くし(不利にさせ)、自分のアームを最適化する(有利にする)のが格闘技の基本だ。
Efficient (高トルク)
※ドアノブが端っこにある理由。
Inefficient (低トルク)
※アーム(距離)がゼロに近いから。
定義式 (The Multiplier)
腰への負担計算 (Good Morning)
腰へのトルク = 10kg × 50cm = 500
腰へのトルク = 10kg × 5cm = 50
Physics Hack: 「スティッキング・ポイント」
アームカールで、肘が90度の時が一番「重く」感じる。
これは、重力の線と前腕が直角になり、モーメントアーム(r)が最大になるからだ。
逆に腕を伸ばしきった位置では、rがほぼゼロなので、負荷はほとんどかからない。
Dictionary | 収録用語一覧
物体を回転させる力。
(タウ)と読む。
回転軸からの距離。
長いほど強い。
回転の中心。
関節のこと。
力が働いている方向。
重力なら真下。
現場での応用
スクワットのスタイル論争
・ハイバー(膝が前に出る): 膝関節へのモーメントアームが長くなり、大腿四頭筋に効く。
・ローバー(尻を引く): 股関節へのモーメントアームが長くなり、臀筋・ハムに効く(高重量向き)。
「良い悪い」ではなく、どこの関節にトルクをかけたいかで選ぶ。
アームレスリングの必勝法
勝つための鉄則は「自分の拳を肩に近づける(rを短くする)」ことと、「相手の拳を遠ざける(rを長くさせる)」こと。
相手のアームを伸ばしきってしまえば、相手がどんなに怪力でもトルクは出せなくなる。
JUNIOR LAB
PHYSICS EXPERIMENT
1 ドア押し実験
1. ドアを開ける時、ノブ(取っ手)を持って押してみよう(いつも通り)。軽いね。
2. 次に、蝶番(ヒンジ)のすぐ近くを指一本で押してみよう。
3. 全く動かないはずだ。
4. どんなに強い力(F)があっても、距離(r)がゼロなら、トルク(T)はゼロになる。これがテコの原理だ。
JUNIOR ACTION
FIELD PRACTICE
ACTION: ロングレバー・プランク
自分の体を「不利(モーメントアームが長い状態)」にして、体幹へのトルク負荷を爆発的に高めるトレーニング。
通常プランク
肘を肩の真下に置く。
肩関節のモーメントアームはゼロに近い。骨で支えられるので楽だ。
ロングレバー (RKC)
肘を、頭よりも「遠く」に置く。
肩から支点までの距離(r)が伸び、腹筋にかかるトルクが急増する。
30秒耐えられたら本物だ。
理解度チェック
Q1. 重たい荷物を楽に持つ方法は?
Q2. トルクを大きくするにはどうすればいい?
MATH CHALLENGE
長さ1mのレンチで、10Nの力で回す時のトルクは 1×10=10Nm。
もし長さが20cm (0.2m) しかない短いレンチしか持っていない場合、同じトルク(10Nm)を出すには、どれくらいの力(N)が必要?
※道具(レバー)が短いと、人間は5倍頑張らなければならない。賢くサボるために物理がある。