INTRO なぜ「頑張っているのに」遅いのか?
試合中、誰よりも走り回り、汗をかき、必死にボールを追いかけているのに、コーチから「無駄な動きが多い」と言われたことはないだろうか?
それは君が、物理学で言う「距離(Distance)」だけを稼いで、「変位(Displacement)」を生み出していないからだ。
スポーツにおける「移動」には2種類ある。「カロリーを消費する移動」と、「試合の結果を変える移動」だ。
この2つの違いを理解した瞬間、君のプレーは劇的に省エネになり、かつスピーディになる。
● 移動距離(Distance)は「疲労の量」、変位(Displacement)は「成果の量」
Distance (移動距離)
実際に足が通過したルートの「道のり」の合計。
ジグザグに走れば走るほど増える。君の疲労感や消費エネルギーと直結する数値。
Displacement (変位)
「スタート地点」と「ゴール地点」を最短で結んだ直線距離と、その方向。
途中でどう動こうが関係ない。「結果的にどこへ移動したか」だけを表す数値。
公式と数学的アプローチ (Formula & Logic)
必要な数字を見つける
- ゴール地点 = 20m ← xf (Final)
- スタート地点 = 0m ← xi (Initial)
引き算をする
プラス(+)は「前進した」ことを意味する。
Dictionary | 収録用語一覧
実際に移動した道のりの合計。
単位: m
空間上の座標。
単位: m
位置の変化量。
単位: m
「変化」や「差」を表す記号。
距離(Distance)はスカラー。
変位(Displacement)はベクトル。
長さの基本単位。
Distanceはこの長さを指す。
勝敗を分ける「評価基準」
ディフェンスの「無駄」
● 悪い守備はボールを追う(Distance大)、良い守備は先回りする(Displacement最適化)
BAD PATTERN
ボールを追いかけて「犬のように」走り回る。
ボールの軌道(Distance)に合わせて自分も動いてしまうため、体力を激しく消耗するが、結局追いつけずに抜かれる。
軌跡はスパゲッティのように絡み合う。
GOOD PATTERN
相手の「到着地点」を予測し、先回りする(インターセプト)。
ボールではなく「未来のスペース」へ直線的に動く。
移動距離は最小限だが、最大の変位(ボール奪取位置への到達)を生み出す。
軌跡は美しい直線を描く。
アジリティテストの罠
反復横飛びやシャトルランは、物理的には「変位ゼロ」の運動だ。
スタート地点に戻ってくるため、仕事(場所の移動)としては成果ゼロ。
しかし、なぜこれがキツイのか? それは「方向転換」にエネルギーを使うからだ。
● シャトルランは「元の場所に戻る」ため、物理的な変位はゼロになる
Coach's Insight:
「疲れた」と満足してはいけない。試合で求められるのは「変位(ゴールへの接近)」だ。
その場で行ったり来たりするシャトルラン的な動きは、ディフェンスの対応時以外は極力減らすべき「ロス」である。
JUNIOR ACTION
SELF-CHECK & MATH DRILL
1 GPSアート実験
もしGPSトラッカー(あるいはスマホのランニングアプリ)を持っているなら、自分の練習中の軌跡を記録してみよう。
自分のポジションのエリアを塗りつぶすように動いているか? (Distance型)
要所要所を直線的に動いているか? (Displacement型)
※うまい選手ほど、ヒートマップ(動いた範囲)は必要最小限に収束する。
MATH CHALLENGE
ある選手がシャトルランをした。
「0m地点」からスタートし、「20m地点」まで走ってタッチし、また「0m地点」に戻ってきた。
- 移動距離 (Distance) : 20 + 20 = 40m
- 変位 (Displacement) : 0 - 0 = 0m