INTRO 「速い」とは何か?
スポーツの世界で「あいつは速い」と言うとき、そこには曖昧さがある。
マラソンのペースが速いのか? 100mのトップスピードが速いのか? それとも一瞬の出だしが速いのか?
物理では、これを「速さ」「速度」「加速度」という3つの別々の言葉で定義する。
コーチが求める「速さ」がどれなのかを理解しなければ、正しいトレーニングはできない。
● 速さ(Speed)は向きを持たないが、速度(Velocity)は「進む方向」を含む
「速さ」と「速度」の違い
日常会話では同じ意味だが、バイオメカニクスでは厳密に区別する。
重要なのは「方向」があるかどうかだ。
公式と数学的アプローチ (Formula & Logic)
数字を見つける
- 終わりの速度 = 10 m/s ← vf
- 始めの速度 = 0 m/s ← vi
- かかった時間 = 2秒 ← t
上の引き算を先にする
割り算をする
「1秒ごとに5m/sずつ速くなった」という意味。
Dictionary | 収録用語一覧
スピード+方向。
単位: m/s
速度の変化率。
単位: m/s²
秒数。
単位: s (second)
「あと - さき」の計算を示す。
1秒に進むメートル数。
毎秒、毎秒スピードが増える。
Speedはこれ。
Velocity, Accelerationはこれ。
勝負を分ける「a」の正体
最高速度 vs 初速
● 100m走(最高速度型) vs 球技(加速力型)。勝負の決まり方が違う
100m SPRINT Logic
ウサイン・ボルトは後半の最高速度(Max Velocity)が異常に高い。
100mという長い距離があるからこそ、その最高速度を活かして追い抜ける。
COURT SPORTS Logic
バスケやサッカーのコートは狭い。最高速度に達する前にエンドラインに着いてしまう。
ここで勝つのは、0.5秒で時速20kmに達する高加速度(High
Acceleration)の選手だ。
3秒かけて時速30km出す選手よりも、一歩目の爆発力がすべてを決める。
「減速」も才能
アジリティ(方向転換)の正体は、実は「減速能力」にある。
急停止して相手を置き去りにする動きは、マイナスの方向に強烈な加速度を生み出しているのと同じだ。
NBA選手は加速がすごいのではない。「止まるのが速い」から、DFがついていけずに相対的に速く見えるのだ。
ブレーキの壊れたF1カーはレースに勝てない。
● 急停止(減速)も、後ろ向きへの強烈な加速能力の一種である
JUNIOR ACTION
SELF-CHECK & MATH DRILL
1 「10m」計測チャレンジ
50m走のタイムは忘れよう。チームスポーツに必要なのは最初の10mだ。
友達にスマホで動画を撮ってもらい、最初の3歩までにかかる時間を計ってみよう。
「足の回転数(ピッチ)を上げる」のと「一歩を大きく蹴る(ストライド)」、どっちが最初の10mには速いか?実験してみよう。
MATH CHALLENGE
ある選手が、止まった状態(0 m/s)から、2秒後に時速36km(10 m/s)になった。
この時の平均加速度(a)は?
- 速度変化 (Δv) : 10 - 0 = 10 m/s
- 時間 (Δt) : 2 s
- 加速度 (a) : 10 ÷ 2 = 5 m/s²