INTRO それは「燃費」の問題だ
スポーツの世界では、スタミナがないと言われる選手でも、実はエンジン(心肺機能)の性能は悪くないことが多い。
問題は「運転の仕方」が荒いことだ。
無駄な動きが多いと、どんなに大きなガソリンタンク(体力)があってもすぐに空になる。
「動作効率(エコノミー)」を高めるとは、プリウスのような静かで無駄のない走りを目指すことだ。
出力 ÷ コスト = 効率
車で言えば、同じガソリン1リットルで何キロ走れるか。
人間で言えば、ある速度で走るためにどれだけの酸素(VO2)を使うか。
フォームを改善する最大の目的は、美しさではなく「省エネ」だ。
重心の上下動を減らす、ブレーキをかけない、力を抜く...これらは全て燃料消費を抑えるための技術である。
Non-Economical
ドタドタ走る / 上下に弾む / 力む
Economical
スルスル走る / 水平移動 / 脱力
公式 (Formula)
2台の車で400km走る
- 車A (ボロ車): 燃費 10km/L
- 車B (エコカー): 燃費 20km/L
必要なガソリン(Cost)を計算
車B: 400 ÷ 20 = 20L
※ 同じ距離を走っても、効率が悪いと2倍のエネルギーを浪費する。後半バテるのは体力のせいではなく、燃費が悪いからだ。
Physics Hack: 「ブレーキ」を外せ
人間はアクセル(加速)よりもブレーキ(減速)に多くのエネルギーを使う。
走る時に足を前に出しすぎると、着地の瞬間に地面をつっかえ棒のように押してしまい、ブレーキがかかる。
これを「オーバーストライド」と呼ぶ。
足は体の真下に着地させる。これだけで燃費は劇的に向上する。
Dictionary | 収録用語一覧
走りの燃費。
最大酸素摂取量より重要。
上に跳ぶエネルギーは
前進には無駄。
拮抗筋(ブレーキ筋)を
休ませる技術。
1分間の歩数。
回転数で稼ぐのがエコ。
より長く、より速く
キプチョゲの走りはなぜ美しい?
マラソンの世界記録保持者エリウド・キプチョゲの走りは、まるで氷の上を滑っているように静かだ。
彼の上半身は全くブレず、無駄な上下動が極限まで削ぎ落とされている。
42.195kmという長距離では、一歩ごとの数mgのエネルギーロスが、後半の失速に直結するからだ。
水泳のストリームライン
水泳は陸上の約800倍の抵抗を受ける。
だから、水泳選手はパワーをつけることよりも「抵抗を減らす(水のような形になる)」ことに命をかける。
指先から足先まで一直線に伸びる「ストリームライン」を作れない限り、いくら掻いても前に進まない。
JUNIOR LAB
PHYSICS EXPERIMENT
1 忍者歩きチャレンジ
廊下を全速力で走って、どれだけ静かに走れるか試してみよう。
「ドスドス!」と音がするのは、エネルギーを地面に叩きつけて無駄にしている証拠だ。
「タタタ...」と忍者のように音を消して走れたら、それが一番エコで速い走り方だ。
音は「エネルギーの無駄遣い」
「ドスドス」という足音は、君のパワーが地面を揺らすこと(=音)に使われてしまっている証拠だ。
世界トップレベルのマラソン選手は、猫のように静かに走る。
「静けさ」こそが、エネルギーが無駄なく推進力に変わっている証明なんだ。
JUNIOR ACTION
MOVE YOUR BODY
ACTION: 縄跳び耐久レース
一定のリズムで何分跳べるかやってみよう。
-
MISS
高く跳びすぎる すぐに疲れる。無駄なエネルギーだ。
-
SUCCESS
紙一枚の高さを跳ぶ 縄が通るギリギリの高さ(数ミリ)だけ跳ぶ。
これなら何分でも続けられるはず。
これが「効率の良い動き」の感覚だ。
CHECK POINT
- 着地の音は静かか?
- 肩の力は抜けているか?
- 息は切れていないか? (鼻呼吸できれば完璧)
SELF-CHECK & MATH DRILL
REVIEW
理解度チェック
Q1. 長距離走で一番大事なのは?
ヒント:ガソリンタンクが大きくても無駄遣いしたら?
Q2. 走るときの悪い音は?
- ドスドス(エネルギーを捨ててる音)
- タタタ(軽やかな音)
- スースー(風を切る音)
MATH CHALLENGE
車A(燃費10km/L)と車B(燃費20km/L)で400km走る。
必要なガソリンの差は?
B: 400÷20 = 20L
差: 20リットル
※ 人間も同じ。燃費が悪ければ、ライバルの2倍疲れてしまう。