INTRO なぜ水の中では前に進めないのか?
水は空気の約800倍の密度がある。
陸上と同じように手足をバタバタさせても、この「見えない壁」に行く手を阻まれるだけだ。
だが、一流のスイマーは違う。
彼らは水と喧嘩せず、水を「足場」にして、滑るように進んでいく。
鍵は「抵抗を減らすこと」と「推進力を得ること」の完全な分離だ。
Fluid Resistance (流体抵抗)
水中で物体が進む時、必ずブレーキがかかる。これを抗力(Drag)という。
特に「造波抵抗(波を作る無駄なエネルギー)」と「形状抵抗(体の断面積)」がタイムを奪う。
力を入れて泳ぐよりも、まずは「抵抗を消す姿勢」を作ることが、最速への近道だ。
公式 (Drag Equation)
水の法則
Physics Hack: 「ハイエルボー」
進む時はA(面積)を最小にするが、水をかく時だけは別だ。
水をかく腕(パドル)の面積は大きい方がいい。肘を立てる「ハイエルボー」は、前腕全体を巨大なオールにして、大量の水を後ろに押しやる技術だ。
Dictionary | 収録用語一覧
抵抗を極限まで減らす
基本にして究極の姿勢。
水を「重たい固体」として
捕らえる瞬間。
肺を浮き袋にして
重心バランスをとる。
速度の2乗で増える
最大の敵。
水と友達になる
針の穴を通す
一流選手は、水の中に自分の体サイズの「筒」をイメージし、その中を触れずに通り抜ける。
頭を入れ、肩をすぼめ、足先まで一直線にする。少しでもはみ出せば、それがブレーキになる。
水を逃がさない
手で水を撫でてはいけない。
水を「コンクリートの壁」だと思い込み、そこに手を固定して、自分の体を前に引き寄せる。
これが「キャッチ」の本質だ。
JUNIOR LAB
PHYSICS EXPERIMENT
1 お風呂でハンドパワー実験
お風呂の中で、手を動かして「抵抗」を感じてみよう。
A: 手のひらを広げて(パー)動かす → 重い!
B: 手をチョップの形にして動かす → 軽い!
C: 手を握って(グー)動かす → その中間?
水の重さが変わる不思議を体感しよう。
実験のポイント
泳ぐ時は「進む体」はB(チョップ)のように抵抗を減らし、「かく手」はA(パー)のように抵抗を増やす。
JUNIOR ACTION
FIELD PRACTICE
ACTION: 陸上ストリームライン
プールに入る前に、完璧な姿勢を作れるか?ベッドの上でもできるぞ。
ロケット姿勢
1. 両手を上で重ねる(手のひらではなく、手の甲と手のひらを重ねる)。
2. 二の腕で耳を挟む。
3. つま先をバレリーナにように伸ばす。
4. お腹をへこませて、背伸びをする。
このまま1分間キープできるかな?
チェックポイント
全身が一本の「硬い棒」になっているか?
誰かに足を持ってもらって、グラグラしたらNGだ。
理解度チェック
Q1. 泳ぐスピードを2倍にすると、抵抗はどうなる?
Q2. 水をかく時、手の形はどうする?
MATH CHALLENGE
速さvを3倍にしたい。
抵抗力Dはvの2乗に比例して増える。
3倍の速さで泳ぐと、抵抗は何倍になる?
※だから力任せじゃダメなんだ。抵抗そのものを減らさないと!